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男「まったく…近所迷惑も程々に…?」
頭をぽりぽりかきながら、寝呆けまなこで引き戸を開けると
「赤ん坊…?」
泣き喚く短い金髪の赤ん坊がそこにいた。
女の子らしい…
彼は内心ため息をつく。
《捨て子か…最近は少なくなったと思っていたんだけどなぁ…おっ?》
彼は気付いた。
その赤ん坊のそばにはいつ置かれたのか…封筒が落ちていた。
中には二枚メモが入っていた。一枚目は
『照臨 純(しょうりん・じゅん)0才』
二枚目は
『然るべき時に迎えに行きます。この子をよろしくお願い致します。 照臨 』
達筆な字だった。
《照臨…か》
普通にはなさそうな名前だ。名前だけからも、ただ者とは思えない予感がする。
《てか、然るべき時っていつだよ…はぁ~》
男「…ま、いっか。お~い柚子婆(ゆずばあ)!おっとと…よぉーしよぉーし♪」
彼は今だに泣き声が納まらない赤ん坊をだき抱えて、とんとんと叩いた。
すると不思議なことに徐々に《純》は泣くのをやめた。
柚子婆「なんだーい?その声はー…春ちゃんかい?」
朗らかな笑顔と豊かな身体をゆったゆった動かしながら現われた彼女は、50代半ばに見える。
ゆっくりとした声は心を癒してくれそうだ。
男「…柚子婆その呼び方はやめてくれって言ったじゃん。」
子供の頃から変わらない呼び方に苦笑する。
春と呼ばれた彼の名は、「椎名 小春(しいな・こはる)」
通称『春ちゃん』
サラサラな蒼い髪、目を惹くような端正な顔立ちで細身の彼は二十歳そこそこに見える。
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