2.彼方の記憶

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アークは雨が嫌いだ。しかし、皮肉にも、自分とマイの子供が生まれた日も、大雨だった。 「うっ、生まれた…。」 医者に見守られ、無事我が子を生んだマイは、その我が子を見ながらそう言った。しかし、それが、我が子との、最初で最後の対面となる。 アークはと言うと、医者に言われて、大樹に薬草を採りに来ていた。しかし、その選択が、彼を、一生後悔させることとなる。 薬草を手に、家に戻った時には、お腹がばっさり裂けたマイの姿と、赤ん坊を抱いた、真っ赤な医者がいるだけだった。 「なっ…、なんてことだ…!」 「お前の血筋は危ない。今のウチに根絶やしにしておかなければ。」 真っ赤な医者…、否、真っ赤な魔物は、そんなことを言った。しかし、アークは聞いていない。アークは、キッ、と魔物を睨みつけ、次の瞬間には、その魔物は真っ二つになっていた。 「俺は、また護れなかった…。もう二度と、同じ過ちは繰り返さないと誓ったのに…。もう、誰も信じないって、誓ったのに…。」 アークは、涙を堪えられなかった。もう、マイは戻ってはこない…。 「オギャー!」 腕の中で赤ん坊が泣いていた。 その泣き声を聞いてか、ユリアが家にやってきた。 「なっ…、何事?」 アークは何も言わず、赤ん坊を、母親の亡骸の横にそっと寝かせた。 「カイン、ちょっと待っててくれ。」 「ちょっ、ちょっと!」 アークは、そんな声は気にせず、ただ、歩き出した。 神がいるところへ。 「力が、欲しい…。」
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