運命の歯車

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「なっ、なんだよ、お前…。」 アークは、今まで見たこともない魔物の姿に、驚き、戸惑っていた。 「平和ボケしている愚かな人間よ、滅びろ!」 刹那、魔物の周りから炎が上がった。大樹の周りは一瞬で炎に包まれた…。 アークは、何が起こったのかも分からぬまま、永遠に意識が遠退いていった。 そのはずだった…。 「彼を…、救ってあげて…。」 アークの意識の中で、そんな声が聞こえたので、思わず手を振り払った。 すると、目の前の景色は、一瞬にして元に戻った。 「何が…、起こったんだ?」 アークは状況を理解できていなかった。しかし、それは魔物の方も同じ事で…。 「何が起こったのだ?」 と、呟いていた。 「彼を救うのは、貴方にしかできない。」 また、誰かがアークの意識の中に語りかけてきた。 意味は分からなかったが、魔物の方は相変わらず敵意剥き出しなので、とりあえず、アークは、父親から受け継いだ形見の剣を抜いた。すると、その剣が、眩い閃光を放った。 時を同じくして、一組の旅人が、この、大樹の生える島へと降りたった。 「懐かしいな…。」 そう言う男‐シェイド=クレイド‐は、傍らの‐ユリア‐の方を向いた。 「貴方の故郷がこの、大樹の生える島だったなんて、びっくりだわ。ん、あそこ、何か燃えてるわよ?」 「あぁ、本当だ!」 ユリアが指さす方向、大樹の生える場所は、確かに赤く燃えていた。ただ事ではないと思い、彼らはその場所へ向かった。 彼らがその場所にたどり着いたときには、すでに炎は消えていた。だが…。 「何で魔物と人間が戦っているんだ?」 シェイドは疑問に思った。このご時世、魔物が人を襲うなど、有り得ないからだ。 その時、人間の持っていた剣が、眩い閃光を放った。 アークは、その光で魔物が怯んだ隙に、脇腹を斬った。しかし…。 アークの身体は、魔物の腕に貫かれていた。 「イヤ!」 思わずユリアは叫んだ。シェイドは、ユリアの目を覆い、同時に、呪文を唱えた。 魔物自身、何が起こったのか分からなかっただろう。 気がついたときには、そこに魔物の姿はなく、お腹がぽっかりと空いたアークの姿があるだけだった。 そのまま、アークはバタッと倒れてしまった。
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