865人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、その瞬間またもや生暖かい風が原田の頬を掠めた。
原田は、何故か恐怖感が芽生え身体が動かなくなった。
『言ったでしょ?死神は、縄張り意識が強いって。薫さんとの生活を短い間でしたが共にしてきた、貴方達には、もう死神の臭いが着いているんですよ。今行けば、死神と見なされ攻撃されますよ』
そう言うとシキは、冷たい視線を原田に向けた。
『原田さん、此処は一先ず待ちましょう。沖田さんも』
今まで、口を出さなかった山南が真剣な顔で口を開いた。
山南に宥められ、沖田と原田は、大人しくなった。
そうこうしている内に不意に辺りの空気が通常に戻り、いつしか雨は止み雲の隙間から久しぶりの月が姿を表した。
『どうやら、本当に終わったようですね』
シキは、そう言うとスッと立ち上がり真っ直ぐに芹沢の部屋えと向かった。
その後に土方、山南、沖田、原田がつづく。
部屋の中には、お梅の遺体としっかりと抱き合った芹沢の遺体のみがあり、薫の姿は、どこにもなかった。
沖田は、それを実感すると再びうなだれた。
『薫さん・・・』
沖田の小さな声は、もう薫には届く事は無かった。
沖田は、今までに人を好きだと感じた事がなかった。
初めて惹かれた相手を失った沖田。
絶望と言う言葉が彼の心を支配した。
そんな時、部屋を見渡していた原田の声が部屋に響いた。
『見てくれッ。芹沢さんとお梅さんの遺体。何か抱いてるぞ』
シキ、土方、山南は、呆然とする沖田を残して、芹沢とお梅の遺体に駆け寄った。
最初のコメントを投稿しよう!