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広大な海に囲まれ、豊かな自然に恵まれた列島に、トルク村という村があった。
人口は約1万人、三十年前までは、一生をこの村で過ごす者が殆どであったが、今では、成人になると、技術の発達した先進国へ出て行く者が過半数を占め、村の人口も減りつつある。
だがこの村は、人々の争いもなく、大変平和な村であったため、村を出ずにここで一生を終えたいと考える者も少なくなかった。
そんなトルク村に、ある一人の少年がいた。彼は十二歳で、
名はルイス。
リンリンリン!
「はい、今日の授業はここまで! ちゃんと復習しとけよっ。」
村に唯一存在する学校の授業が終わった。
「ふぅ、今日も授業長かったな~」
ルイスは、麻布でできた質素なバッグに厚い教科書をつめながら言った。
「そうか? 今日の社会は、外の世界に興味もてるような授業じゃなかったか?」
友達のレノが言った。
「ボクは別に外国なんか行きたくないし、数学と社会は殆どわかんないしさ。」
「殆どわからない? オマエいつも学年で真ん中らへんの順位じゃないか。」
「あれは一夜漬けさ。ただの丸暗記じゃ理解してるとはいえないよ。」
「そっかぁ。じゃずっとこの村に残ればいいじゃないか。そしたらこんな勉強しなくたっていんだぜ?」
「母さんが許さないよ・・・」
うつむき加減でルイスはそう言った。
「なんで親のいいなりなんだ? お前の好きにすりゃいいじゃないか。」
「でも・・・」
「でもなんだよ?」
「・・・何でもないよ。じゃボクはこれで帰るね。」
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