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ルイスは足早に学校をでた。
腰のベルトには、二年前、母親がプレゼントしてくれたブーメランが挟められていた。
「
早く帰って母さんにあげる首飾り完成させなきゃ!」
家に向かって走るルイスの目線の先に、荷物のたくさん乗った荷車を引くおばあさんがいた。
ルイスは足をとめ、おばあさんのうちまで荷車をおしてあげた。
幼き頃に父親は家を出て行き、母と二人で暮らしていた。
彼は村にある学校に通っていた。そこでは国語・数学・世界史を8歳の頃から7年かけて教わる。先進国で働けるようになるためだ。
村で一生を終えると決めた者は、学校には通わず、親や親
戚、祖父母から生きるために必要な知恵を学ぶことに精を出す。
ルイスがその学校に通う理由は、母親が彼に先進国で働くことを希望したためだ。
実際彼はそんなことは希望していなかった。
ただ、こののどかな村で静かに暮らしたいだけだった。
しかし従順な彼は、自分の心に嘘をつき、自分を押し殺して生きてきた。
「ただいま。」
家にはだれもいなかった。
「母さん、洗濯しに行ってるんだな。」
ルイスは階段をのぼり、二階の自分の部屋に行き、残りわずかで完成する木製の首飾を作り始めた。太めの木の枝から作った二、三センチの棒状の飾りと、石で丸く削った玉状の木の飾りを組み合わせて作っていた。
数時間後、一週間かけて作っていた首飾りが完成した。
「ようやく完成だぁ! 母さん喜んでくれるかなぁ?」
バタン!
玄関のドアが閉まる音がした。
「! 母さん?」
ルイスは首飾りを手に階段を駆け下りた。
そこにいたのはやはり母親だった。こちらに背を向け手に何かもっている。
「おかえり母さん! あの、これ・・」
「ルイス。」
ルイスの言葉をさえぎるように母親は口を開いた。
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