大切なモノ…

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ザザァーーン…ッ 波打つ音が微かに聞こえ、人魚は震える瞼をうっすらと上げたーー。 「~~っ…、ぇ…?」 人魚は円らな瞳を更に見開き、辺りを凝視した。 人魚の目の前に広がるのは… 「…砂…、浜…?あれ??私…海の中に…、ぇ?私…陸に上がれ……」 目の前に広がるのは、何処までも続く海面に、ザラッとした砂…。 そして何より、人魚はあの尾ひれの足ではなく、人間の2本の足が自分にくっついている。 その2本の足で立っているのだ。 人魚は驚愕し、言葉を失ったーー。 「嬉しいですか?願いが叶って。」 突如、海の方から声が聞こえた。 それは、よく聞き慣れた声で、人魚は声の主を見た。 「…願い、叶ったんですよ?」 「……っ…ムゲン…」 「あれ?嬉しくないのですか??貴方は愛する人と一緒に居たいのですよね?行かないんですか??」 「ゆ、め…じゃないのね…?わたし…本当に…」 いまだに信じられない人魚は、ムゲンに真実を求めた。 「勿論。私は嘘はつきませんよ?」 ニコッと笑うムゲンに、人魚は嬉しさが込み上げてきた 「私!あの人と同じ人間になったのね!?嗚呼、なんて素晴らしいんでしょう!!ムゲン、貴方は私の恩人だわ!」 興奮気味に声を張り上げる人魚に、ムゲンはあの笑顔を浮かべた。 「そんなに喜んで頂けるなら、お安い御用ですよ。さぁ、愛しの男性の元へお行きなさい。」 「えぇ、そうね!早く彼の元へ行かなければっ!!あ、ムゲン!ありがとう!!貴方には何度御礼を言っても足りない位だわ!」 人魚は落ち着きなくムゲンに告げると、足早に立ち去ろうとしたが、ふとあることを思い出し、立ち止まった。 「?」 「ぁ…、ねぇ!ムゲン、私にかけてくれた魔法はどれくらい続くの…?」 不安げにムゲンを見つめる双方に、ムゲンは親切に説明してあげた。 「あぁ、その事ですか。タイムリミットはありませんので御安心を…。貴方はずっと人間として生きていくのです。」 それを聞き、人魚はホッと胸を撫で下ろした。 「…そぅ、じゃあ私が支払うモノは…?」 「…それは大丈夫です。勝手に頂きますので、貴方は心配せず、行って下さい。」 ふわりと笑うムゲンに、支払いは気になったが、安心しもう一度、ムゲンに礼を告げると走り去った。
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