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下弦の照らす海は、美しく煌めき、見るもの総ての人を恍惚とさせたーー…
そんな日に、小さくそれでも透き通った歌声がさざ波と共に流れた。
それは…とても安らかな歌声で、しかし、どこか切なさの隠った歌声だったー…
♪揺らぎ揺らめき
あなたは 何を想う?消えそうな 焔を灯すのは誰?♪
その唄は、決して許される内容ではないにしろ、歌っている人物を知れば、そんな唄を口ずさむ事を許される……。
♪揺らぎそうになるの…
あなたを想うと…
嗚呼…光注ぐのなら 私の元へ
闇夜に紡がれるのは なに?♪
今宵も歌うーー…
彼女の歌声はとても美しく、けれどとても哀しく切ない歌声…。
彼女は…人魚。
魚と人のハーフ。
魚にもなれず、人にもなれなかった、とても辛いハーフ…。
そんな彼女が毎夜、陸に上がり歌う。
誰の耳に届くことのない唄…。
彼女はただ一人、人間に恋をしてしまい、人魚の掟を守るべきかを悩み苦しんでいたーー誰にも相談出来ない彼女の悩み……
♪どうか 届きますよう
この声ある限り…
この命ある限り…
嗚呼 私の指先は何を掴むの?
温もりあるなら 私の心の焔を消して…♪
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