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「……」
ムゲンの瞳は何処までも続く闇色で、人魚は思わず見とれた。 すると、ムゲンはクスクスと小さく笑い、人魚の腰掛ける岩に腰を下ろした。
「私はただ…、いつもの散歩コースを歩いていたら、たまたまあなたをお見かけしただけですよ?」
ふわりと笑うムゲンは、とても綺麗で、人魚は少しずつ警戒を解いていくーー。
「何度かあなたをお見かけしまして、その度にあなたは泣いてらした…。」
「……っ…」
「…あなたが時々口ずさむ歌…あれは何とも云えぬ淋しさと…、愛を感じました。」
「…あの歌…聴いて…?」
よもや自分の口ずさむ歌が聴かれていたとはつゆ知らず、聴かれてしまったという恥ずかしさと焦りが入れ混じった彼女は、不安と驚愕の目でムゲンを見つめた。
「…ご安心下さい。私は、何があっても誰かに従う事は在りません故、どの様な事態になっても…私は素知らぬ顔で居ります。」
毅然とした態度のムゲンの瞳に偽りを感じ取れず、人魚は誰にも云えなかった秘密を打ち明けるべく、閉ざされた口を開いたーー……
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