大切なモノ…

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約束の日ーー 人魚は半信半疑ながらも、夢が叶うという一心で、ムゲンとの約束した場所で彼女を待った。 「…もし…、ムゲンの話が本当なら…私、あの人の元へ行けるのね…!」 ーー嗚呼…、なんて素敵な話なんでしょう!! 人魚はうっとりとし、ムゲンとの運命的な 出逢いに感謝した。 彼女と出逢わなければ、きっと夢は夢のまま…儚く消えるところだった。 それが、本当か嘘かは判らないが、夢を叶えてくれると名乗り上げてくれたのだ。 人魚は愛しい彼に逢えるのなら、悪魔に魂を売っても良いとさえ、考えていた。 「嗚呼…、待たせてしまいましたか?」 思いに更けていた人魚の耳に、待ちわびた人の声が聞こえた。 人魚は慌てて声のする方へ、顔を向けた。 「ーー?!…ぁ、ムゲン!!」 人魚は嬉しそうに笑い、ムゲンの元へ駆けた。 「大分…待たせてしまいましたか?」 そう申し訳なさそうに訪ねるムゲンに、人魚は首を横に振った。 「いいえ!大丈夫よ、私が待てずに早く来てしまっただけですもの。」 「そうなのですか?…嗚呼でも…、愛しい人に逢いたければ早く来てしまいますね。」 「えぇ!」 人魚は美しく笑い、ムゲンを見据えた。 「ーーそれで…、あの…本当に私の願いが叶えられるの?」 不安げに訪ねる人魚に、ムゲンは可笑しそうに笑った。 「大丈夫ですよ。俄には信じられないでしょうが…、私こう見えても、ただの人魚では御座いません。」 それを聞き、人魚はムゲンを上から下まで凝視し、呆けた。 彼女はどっから見ても、自分と同じ人魚だ。 呆けている人魚の視線に気付き、ムゲンはまた笑って説明した。 「私は今は貴方と同じ人魚ですが、私の職業は“夢叶え人”です。その名のとおり、夢を叶えるんです。」 彼女の説明に、人魚は疑うよりも証明を求めた。 「では実際に、貴方の夢…叶えます。」 ムゲンの言葉に、人魚は頷き、軽く喉を鳴らした。 「…瞳を閉じて、貴方の夢…、もう一度思い描いて下さい。」 そう告げると、人魚は素直に従った。 それを確認すると、ムゲンは鍵の形をしたペンダントを取り出した。 ペンダントには、一つの水晶のような小さな玉が植え込まれており、今は蒼色に輝いていたーー。 ムゲンの指に填められた指輪を翳すと、其処から小さな扉が現れたーー。
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