序章

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もうこの地には帰って来たくはないと思っていた。 だってここは……両親が死んだ地だったから。 10年前私の両親は この地で爆発事故に巻き込まれ…死んだ。 私もその時、一緒だったけれど… ……私だけが生き残った。 「…変わったなぁー…」 10年という長い年月が過ぎれば、あの時の爪跡は全く残されていない。 …最初から何も無かったかのように。 『次は、巖戸台ー 巖戸台です』 電車のアナウンスが聞こえ、網棚から自分の荷物を取る。 立ち上がると同時に、肩から下げていたイヤホンを耳にかけ、スイッチを押した。 ~♪ レンタル店でCDジャケットに惹かれて借りた曲がかかった。 最初はあまりしっくりこなかったが、今となっては気に入っている。 「遅くなっちゃった…」 大幅なダイヤの乱れがあり、到着に随分と時間が掛かってしまった。 予定より1時間以上も遅れ、駅に着いたのは……23時52分。 「入寮手続きとか、大丈夫なのかな…? というか、寮自体に入れるのかな?」 携帯の電波時計を見る。23時59分… 「やっば!早くしないと…!!」 事前に貰っていた入寮先の地図を取り出し、早足で急ぐ。 ~♪ …… 「…あれ?」
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