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「大丈夫。 この契約書は、これから自分の決めた事に 責任を取ってもらうっていう…当たり前の内容だから。」
男の子はそう言うと、カウンターからペンを取り、差し出した。
それを無言で受け取り、契約書の文面をもう一度読む。
「我、自ら選び取りし、いかなる結末も受け入れん…か……。」
カウンターの上に契約書を置き、名前記入欄と思われる場所にペンを滑らせた。
有里 湊
----湊。
湊と言う名前は気に入っている。
両親が、「友達に囲まれるような、明るい子になってほしい」と思いを込めて付けてくれた名前だから。
その名前のおかげか、生まれてこの方 友達に困った事はない。
…転校先である月光館学園でも、友達は出来るだろうか?
「…確かに。」
男の子は、湊がしっかりと名前を書いた事を確認すると、こくりと頷いて、契約書を閉じた。
「時は全てのモノに結末を運んでくる。
…たとえ、目と耳を塞いでいてもね。」
男の子がすっと契約書を横に振ると、それは空気に混ざるようにして無くなった。
「さぁ…」
男の子の周りが暗闇に包まれていく…
「始まるよ」
男の子はそう言い捨てると、暗闇に溶けるようにして姿を消した。
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