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今日はクリスマスイブ。
普段飲まないシャンパンなんか頼んでみたり、寄り添って甘い言葉を囁きあったり・・・。
幸せそうに微笑むカップルでいっぱいな店内で、私は今日もカウンターに立つ。
咲兄が新婚旅行に出かけたせいで休みがない私は勿論クリスマスだって例外なくお仕事だ。
窓の外はイルミネーションが彩り、恋人がいつになく多い。
こんな時、頭に浮かぶのは結城君で、隣にいないことが淋しい。
結城君が仕事でラスベガスに行ってもう2ヶ月。
もう何年も逢っていないような気分だ。
時差のせいで私の仕事が終わるころ、結城君は仕事に出かけ、結城君が終わるころ私は仕事。
みごとにすれ違ってしまい、1週間位声も聞いてない。
思わず溜息がこぼれる。
「華さん、そろそろお店閉めます?」
声のした方を見ると腕時計を見ながらニコニコ笑う翼君。
なかなか好青年で評判のいいバイト君だった。
「もうそんな時間?」
私も時計を見ると0時を回っていた。
「そうだね。閉めちゃおっか。」
そう返すと素直に頷きお客さんに声をかけ始めた。
結城君は誰とイブの夜を過ごしたんだろう・・・。
仕事なのはわかってるけれど、やさぐれてしまう。
こんなこと考えちゃ駄目駄目!!
私は自分を叱咤して気分を入れ替える。
今日はさすがにシャンパングラスがいっぱい。
割らないように丁寧に洗い始める。
「華さん・・・。あの・・・。」
申し訳なさそうにもう一人のバイトの美樹ちゃんが近づいて来た。
「あ、いいよ。クリスマスなのにありがとね。助かったよ。お疲れ様!」
私の言葉にパーっと明るい顔をすると「すみません」と走り去った。
そんなに時間も経たない内にお洒落した美樹ちゃんがパタパタと走ってやってきた。
「すみません。お先に失礼しま~す。」
彼氏と逢うんだよね?
「うん。今日はありがとう。助かったよ!」
嬉しそうに扉に向かった美樹ちゃんの後ろ姿を微笑ましい気持ちで見てると突然振り返った。
「あっ!華さん。メリークリスマス!!」
「メリークリスマス!」
聖なる夜に貴方は何を想いますか・・・?
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