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翼君が頑張ってくれたおかげで思ったよりも早くお店は片付いた。
「じゃあ、私ゴミ捨てて来るから翼君そこ終わったらあがっちゃっていいよぉ!」
扉を開けると冷たい風が吹き込んだ。
雪でも降りそうだな・・・なんてぼんやり考えながら階段を降りると人が隠れるように立っていて驚いた私は思わず声が出てしまった。
その声に驚いた相手も小さく声を出した。
「ごめんなさい。ビックリしちゃって・・・。」
そこのには鼻を真っ赤にした女の子が立っていた。
「いえ、こちらこそすみません。」
寒そうに立つ女の子は手にケーキらしき箱を持っていた。
もしかしたら翼君の・・・?
「あの、違ってたらごめんなさいね。翼君を待ってた?」
お店の前でこんな時間に待ってるなんてきっとそうだよね?
私の問いかけに頬がポッと赤くなった女の子は恥ずかしそうにこくりと頷いた。
「ここじゃ寒いでしょ?よかったらもうあがってくるからお店で待ったら?」
女の子は少し考えるそぶりをみせ、首を横に振った。
「ありがとうございます。でも…お店には来るなって言われてて・・・。大丈夫です。それにもう来るんですよね?」
「けど・・・。」
「それに、ここで待っていたいんです。」
そう言った女の子の後ろでネオンが煌めき彼女の想いを引き立たせた。
私はお店に急いで戻るとまだ作業してる翼君を無理やりあがらせた。
「翼君お疲れ様。これよかったら持って行って。」
シャンパンを渡すと嬉しそうにもらってくれた。
外で待つ彼女と飲んでね?
「じゃあ、すいません。お疲れ様です。」
「お疲れ様。メリークリスマス。素敵な夜を。」
「メリークリスマス!」
そう言って走って出て行くとお店はシーンと静まり返った。
下から声が聞こえ、その内遠ざかって行った。
どうしようもなく淋しい気持ちになる。
結城君・・・。
逢いたいよ・・・。
首にぶら下げた指輪を見つめ頭に浮かぶのは意地悪そうに笑う結城君の顔・・・。
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