もう一度、さよなら

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  目を瞑る。   捨てるんだ。 あたしの思いなんか。 想いなんか。   彼に、『さよなら』を 言われるよりましでしょ。 自分から言った方が 楽に決まってる。   そう、決まってる。   そう、決まってるよ。       [アイツしかいない]   なんて、もう思わない。   [寂しい]   なんて、もう思わない。   [生きていけない]   なんて、もう思わない。 もう、何も、思わない。     全ての想いに、 『さよなら』 しなくちゃ。   『裕樹、考えてみて。あんた、最低だよ。』   強い瞳を保ったまま あたしは彼に言った。   『さよなら、最低男。』   そんな事、一欠片も 思ってない。 何かに理由を 付けなくちゃ 嫌いになんて なれないんだ。   彼は、やっとあたしの 顔を見た。 あたしの心が痛くなった。   とても、とても 傷付いた顔をしていたから。
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