真実

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  『……裕樹』   『うん?』   ずっと会っていない わけじゃない。 少ししか時間は 過ぎていないのに。 なのに、こんなにも 彼の声を懐かしく 思うなんて。   『なんで電話して来たの?』   冷たい言葉が 勝手に出た。   我ながら演技派。   そうだよ。 なんで、電話なんか。 柳沢華林と言う彼女が いるじゃないの。   『理由もなしに電話しちゃだめなの?』   『えぇ、そうよ。華林さんはどうしたのよ?あたしに構わないで。』   『華林は、今寝てる。なんか…』   『何よ?』   また、沈黙が続く。 このまま電話を 切ろうかと思った。 その次の瞬間、   『お前の声が聞きたくなったんだ。』   息が止まった。   嫌、息をしているのか していないのか 分からなくなった。   『は?』   振り絞った声で言う。 彼は平気そうにして、   『声が聞きたかったんだよ。』   と、言った。
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