あたしの想い

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彼の後ろ姿が あたしの目に入る。 それだけで、 心臓が止まりそうになった。     見間違いなんかじゃ ないんだ。     間違いなく、彼だ。         うるみそうになる瞳を あたしは必死に堪えた。   泣くわけには いかない。   ここで、泣いちゃ ダメなんだ。     『ひ…ろき』   大声を出そうと 思っているのに、 小さな声しかでない。   『ひろき……』   あたしは、呼ぶ。   『裕樹ッ……』   彼の名を、何度も。   声を振り絞っているのに ちゃんと出ない。   『裕樹ッ!』   自分を情けなく 思いながらも 呼び続ける。   『裕樹ッ!!』     お願いだから。 届いて。  
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