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あたしの声も裕樹に
届かなかったみたいで、
裕樹は病院から出て行った。
あんな裕樹を見るのは
これで2回目だ。
1回目は、あたしが
記憶を失った時。
病室から出て行った
裕樹は、あんな顔を
していた。
あたし達は、しばらく
そのまま立っていた。
裕樹が現れた方からは
微かに泣き声が
聞こえる。
多分、柳沢華林の
両親だろう。
あたし達も病院を
後にした。
二人で帰る帰り道は
無言のまま。
何も話さない。
空を見上げると
青い真夏の空。
ふいに唯が口を開く。
『人ってあっけないね。知らない人だけどさ、裕樹君は知ってて、その人がいなくなったら…あんな顔になってて。』
『うん……。』
『なんだかね……』
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