あなたが好きです。

5/20
前へ
/178ページ
次へ
あたしの声も裕樹に 届かなかったみたいで、 裕樹は病院から出て行った。   あんな裕樹を見るのは これで2回目だ。 1回目は、あたしが 記憶を失った時。 病室から出て行った 裕樹は、あんな顔を していた。   あたし達は、しばらく そのまま立っていた。 裕樹が現れた方からは 微かに泣き声が 聞こえる。 多分、柳沢華林の 両親だろう。   あたし達も病院を 後にした。   二人で帰る帰り道は 無言のまま。 何も話さない。   空を見上げると 青い真夏の空。   ふいに唯が口を開く。   『人ってあっけないね。知らない人だけどさ、裕樹君は知ってて、その人がいなくなったら…あんな顔になってて。』   『うん……。』   『なんだかね……』
/178ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2550人が本棚に入れています
本棚に追加