大崎

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山手線は東京都の東側を今日もぐるぐる回っている。その楕円形のレールにくっ着いた駅の中で、渋谷のような華やかさも無く、新宿や池袋のような猥雑さも無く、巣鴨や上野のような特徴も無い、存在感が希薄。というより、気配を消しているような駅、大崎。そんな駅にふさわしく、見た目も普通、頭脳も普通、気の効いたことが言える訳でもスポーツに打ち込んだりするわけでもない高校生が住んでいた。彼女の名は北品川知子。全身が普通オーラで包まれた彼女だが、恋愛にうつつを抜かすことも感情的に取り乱すようなこともなく、いたって安定したテンションで暮らしていた。そんな彼女には、本人はおろか周囲も気づいていない才能があった。
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