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「一夜!!」
司が叫ぶ。
「あ~、心配すんなって」
「ふん、わかっていないようだな。お前に打つ手などない」
俺の態度が癇に触ったのか、女の声が明らかに馬鹿にするような色を帯びる。
「大人しく従え、そうすれば悪いようにはしない」
「こんな恐喝まがいのことしといて、よく言うな」
そうしている間にも、黒服達はいつでも銃を撃てるよう構えている。
「まぁいい、従わないならそれまでだ」
交渉を諦めたのか、女が再度手を挙げる。
「撃て!!」
瞬間、銃口が火を吹いた。
パン、パン、パン
銃声が連続する。
けれど、倒れたのは黒服達だった。
「なん、だと!?」
状況が把握できず、女が驚愕の声をあげる。
「何驚いてんだよ」
俺の言葉に女が反応する。
「貴様!!、っ!?」
その時になって気付く。俺との距離が離れていることに。
「まさか!?」
ギリリと女が歯を食いしばる。
「跳んだのか、あの一瞬で」
タネ明かし、なんてレベルでもない。女の言う通り、ただ跳んで避けただけだ。
「銃を使う前に、頭を使えよ。あんな状態で撃てば、味方に当たるのは当然だろ」
銃弾が届くより速く、バク転をした。
その結果、標的に当たるはずだった弾は、相手に当たらず、味方に当たることになった。
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