306人が本棚に入れています
本棚に追加
/83ページ
春、暖かな陽気に包まれた風が優しく頬を撫でる。
「ふあぁ~、眠い」
大きな欠伸をしながら、瞼をこする。
いくら寝ても寝足りない。ってのは大袈裟だけど、陽射しを浴びているとつい寝てしまいそうになる。
とはいえ、このまま寝たら間違いなく遅刻だ。流石にそれはヤバイ
「急がねぇと」
駆け出そうとした時
「・・・て下さい」
「別に・・・・・だろ」
「いや、誰・・・助け・・・・」
何処からか、言い争ってる様な話し声が聞こえる。
「なんだ?」
耳を澄ませば、やはりその声は言い争ってる。誘う男を拒絶している辺り、ナンパか何かだろう。何にせよ俺には関係ない。
変な事に首突っ込んで、嫌な思いをする理由もない。
俺が助ける必要なんかない。
別の誰かが助けてくれる。
だから俺には関係ない。
そこまで考えて、考えるのをやめた。
「違うだろ、そうじゃない」
自分に言い聞かせる。
「はぁ~、今日は遅刻だな」
そういって、俺は踏み出す。
勿論、学校とは反対方向にだ。
最初のコメントを投稿しよう!