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木目の壁、コンクリートが剥き出しの床に黒が基調のモダンな作りの内装に仕上げて貰った。
飲食店で何年も修業をし、ようやく自信と貯金が貯まった。その修業時代に出会い、交際を続けて来たエリと、兼ねてからの夢であったカフェを開くに至った。
駅近のビルの地下の一室を借り、今日まで2人で切磋琢磨を、それにようやく軌道に乗り出した矢先だった。
満員御礼とは言わないが、賑わいのある光景。
2人の城と言っても過言では無い店内、私は厨房でエリはホールでとせわしなく動き回っていた。
「エリーっ!大葉と真タコのリゾット上がったぞ!」
「うん!あ、コースケっ、アイスコーヒーとセイロンティーと中国茶を一つずつ!」
「あいよ~!」
20坪ほどの店内、二人で捌ききるには労す忙しさではあった。
そんな中、今日、先程、大きな振動を感じた。
店内には8名、その中に馴染みのお客様が2人いた。
そうだ、振動の後に天井が崩れ落ちて来た瞬間が目蓋の裏に浮かぶ。それにだかあたり、私は気を失ってしまったんだ。
目を見開くが、闇。数名の咳払いが、恐怖感や危機感、孤独感を少し和ませた。
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