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それを良しとしない静によって、研究は中止へと追い込まれた。
結果、雪は自らを保った状態でいられている。
穿った見方をすれば、彼女が感情をあまり表に出さないのは、それが原因なのではとも思える。
何故そんな少女がこの学校に居るのか、気になる人もいるかもしれない。
彼女は今朝転入してきた。何故かは俺も分からない。
つまり桜は今日転校してきたばかりの、しかも領主の娘と、何故知り合いなのかと俺に問い詰めているのだ。
話が横合いに逸れてしまったが、なんにしてもこれは言うなれば雪の話であって、本人が『話すつもりがない』と(口には出していないが)言っている以上、俺がおいそれと他人に話していい事ではないだろう。
よし、誤魔化そう。
「どうして黙るの~!? もしかして私を無視してる!?」
知らない間に熟考していたようだ。桜が三白眼よろしく睨んでくる。
「い、いや……質問が抽象的過ぎて、どう返していいか悩んでいたんだ。無視なんかしてない」
「だから、どうして二人が一緒にいるのよ~!?」
いきなり核心を突いてくる。しかし誤魔化し通すしかない。
「それは……、知り合いだったからとしか言いようがない」
俺は桜に対して言い逃れも、嘘をつき通せた事もない。目は泳いでいないだろうか。
「知り合い!? いつ? なんで? どうして?」
「そこまでは言えないが、割と最近だ」
「何で拓海君なのよ!」
その質問は意味が分からない。
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