第一章 放課後(The Boy and The Girl)

4/19

387人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
 それを良しとしない静によって、研究は中止へと追い込まれた。  結果、雪は自らを保った状態でいられている。  穿った見方をすれば、彼女が感情をあまり表に出さないのは、それが原因なのではとも思える。  何故そんな少女がこの学校に居るのか、気になる人もいるかもしれない。  彼女は今朝転入してきた。何故かは俺も分からない。  つまり桜は今日転校してきたばかりの、しかも領主の娘と、何故知り合いなのかと俺に問い詰めているのだ。  話が横合いに逸れてしまったが、なんにしてもこれは言うなれば雪の話であって、本人が『話すつもりがない』と(口には出していないが)言っている以上、俺がおいそれと他人に話していい事ではないだろう。  よし、誤魔化そう。 「どうして黙るの~!? もしかして私を無視してる!?」  知らない間に熟考していたようだ。桜が三白眼よろしく睨んでくる。 「い、いや……質問が抽象的過ぎて、どう返していいか悩んでいたんだ。無視なんかしてない」 「だから、どうして二人が一緒にいるのよ~!?」  いきなり核心を突いてくる。しかし誤魔化し通すしかない。 「それは……、知り合いだったからとしか言いようがない」  俺は桜に対して言い逃れも、嘘をつき通せた事もない。目は泳いでいないだろうか。 「知り合い!? いつ? なんで? どうして?」 「そこまでは言えないが、割と最近だ」 「何で拓海君なのよ!」  その質問は意味が分からない。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加