第一章 放課後(The Boy and The Girl)

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 桜はどういう訳か中々にご立腹のようだ。  月卿、つまりは領主の娘である雪と知り合いなんてずるいと、そういう意味のように聞こえる。  そういえば、以前のパレードの時、雪を見れてかなり喜んでいたし。 「たまたまだよ。それにこれからはお前もクラスメイトの一人なんだから、今さら言うことじゃないだろ?」  そこまで言ったところで、俺はどこか桜の様子が変わったかのように思えた。  具体的には、今までの怒りが、呆れに変わったとでも言うのだろうか。 「…………そう、だね」  桜はあからさまにため息を吐いた。  最後に一言、『もういいや』とぞんざいに言ってのけたかと思うと、う~んと思い切り背伸びをしている。  おそらく、話はもう終わりという意味なのだろう。 「私……もう帰るね」 「あ、ああ」 「雪さんも、さようなら」  雪はコクリと一つ無言で頷くだけだ。  雪さん、という呼び方は本人がそう呼んでくれ、と紹介されたときの挨拶のついでに言っていたからだろう。  どこかおかしい。  俺はそう思い立ち上がると、桜が駆けるようにして去っていく様子を廊下に出て見送った。  一緒に帰っても良かったのだが。
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