第一章 放課後(The Boy and The Girl)

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 雪は我関せずとばかりに既に立ち上がって、自分の鞄と何故か俺の鞄を持っている。  ついでに言えば、こちらをジッと見て、目で何かしら訴えているようだ。  言いたいことは分かる。つまりは『一緒に帰ろう』ということなんだろう?  ハァ、と呆れ気味に嘆息する。 「帰ろうか」  雪はコクリと頷いた。 「鞄、ありがとな」  俺は雪に右腕を伸ばす。  すると雪は何を勘違いしたのだろうか。鞄を渡すと同時に、俺の腕を左腕で掴んでツカツカと歩き出す。 「な、なんだよ。なんか急いでるのか?」  構図としては女子に腕を組まれて一緒に歩いている形だ。  若干焦る。 「……べつに」 「なら、何でこんなに速く歩いているんだよ」 「早く家に帰りたいだけ」 「それを急いでいるっていうんだよ! とにかく──手を離せ。歩くペースは合わせてやるから」  落ち着かないだろ。  腕を引っ張られて前傾姿勢になっているが、そのまま訴える。  すると雪はピタッと足を止め、掴んでいた手をぞんざいに離したかと思うと、また何事もないかのように歩き出した。
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