第一章 放課後(The Boy and The Girl)

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 なんだろう。どうにも行動の端々に怒りのようなものを感じる。 「ゆ、雪さん……?」  応えない。むしろずんずんと歩みが速まったようにも思える。  なんなんだよ。  俺は半ば駆けるようにして追いつくと、彼女のペースに合わせながらその顔を覗き込んだ。 「なんだよ。怒ってるのか?」 「怒っていない。早く帰りたいだけ」  そうかよ。  どうやらご立腹のようだ。原因も、俺にありそうな気がする。  心当たりはさっぱりだが、雪の瞳が『オメーのせいだよ』と言っているように見えた。  仕方ない、とりあえず話題を変えるしかない。  身に覚えのないことに対して謝れる程、大きな器なんて持っていない。 「そういえば、お前の家ってあの《月宮》だよな? こっからじゃかなり遠いけど、迎えかなんか来るのか?」  雪は一拍の間を置く。言うかどうか考えているのだろうか。 「ない。歩いて帰る」  簡潔に答えた。 「マジかよ!?」
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