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内心どういう風に切り返してやろうかと考えながら待ち構えていると、どういうわけか雪はピタリと立ち止まった。
急な静止に二、三歩遅れて俺も足を止める。
雪はこちらに向き直ると瞳をうるませてこちらを見上げてきた。
「そばに……いたくない?」
と言った。
上目遣いに。
普段表情をほとんど変えない彼女が、とても不安そうに。
「…………へ?」
今にも涙ぐみそうな小さな少女に、根拠もなく唐突に罪悪感に襲われる。
「私を守るって言ったのは……うそ?」
真っ直ぐに向けられた瞳。
追い詰められているのが、自分で分かる。
額から、いや体中から嫌な汗が噴き出すかのように流れている。日も暮れてきて、かなり涼しくなってきているはずなのに、背中がじっとりと湿っている。
雪は沈黙を守っている。俺に何か答えて欲しいのだろう。
これはどうにかしなければまずい。俺の頭が『予感』として警鐘を鳴らしている。
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