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「……………………」
俺はこのとき、生まれて初めて実感した。
本当に驚いたときには、何も言えなくなるということを。
絶句、である。
俺は今、雪の家の前に来ている、らしい。
らしい、というのはそれは一応彼女の言であるものの、いまいち、というか全く信じることができないからに他ならない。
学校を出立して約二十分。
予想外に早く着いたと思ったら、予想外の展開となっていて、全くついていけない。
雪は何事もないかのように建物の中に入っていこうとする。
「待て待て待て! これは一体どういうことだ!?」
「…………どういうこと?」
完全にオウム返しだった。
こちらの言いたいことがよく分かっていないらしい。
「これだ! この現状だ! これはどう見ても『俺が住んでいるマンション』じゃねぇか!」
俺の視線の先には、見慣れた集合住宅ビルがあった。
「私がここに住むから」
小さな少女は、その小さな口を小さく開いて事も無げに言った。
「なんだそのどっかの恋愛ゲームみたいな展開は! ってかさっきは《月宮》に帰るって言ったよな!?」
「言っていない。家まで歩くと言っただけ」
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