第一章 放課後(The Boy and The Girl)

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「……………………」  俺はこのとき、生まれて初めて実感した。  本当に驚いたときには、何も言えなくなるということを。  絶句、である。  俺は今、雪の家の前に来ている、らしい。  らしい、というのはそれは一応彼女の言であるものの、いまいち、というか全く信じることができないからに他ならない。  学校を出立して約二十分。  予想外に早く着いたと思ったら、予想外の展開となっていて、全くついていけない。  雪は何事もないかのように建物の中に入っていこうとする。 「待て待て待て! これは一体どういうことだ!?」 「…………どういうこと?」  完全にオウム返しだった。  こちらの言いたいことがよく分かっていないらしい。 「これだ! この現状だ! これはどう見ても『俺が住んでいるマンション』じゃねぇか!」  俺の視線の先には、見慣れた集合住宅ビルがあった。 「私がここに住むから」  小さな少女は、その小さな口を小さく開いて事も無げに言った。 「なんだそのどっかの恋愛ゲームみたいな展開は! ってかさっきは《月宮》に帰るって言ったよな!?」 「言っていない。家まで歩くと言っただけ」
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