序章 終春(End of Spring)

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 彼女──國見桜(くにみ さくら)のことについて語るならば、それはきっと俺の役目だ。  このことを話すことができるのは、俺か、当事者たる國見桜本人だけだろう。  いや、俺にもそんな権利はきっとない。俺の情けなさ、不甲斐なさが彼女を傷つけて、他の人まで巻き込んだのだから。  もしかしたら、俺こそが一番彼女について語ってはいけない人間なのかもしれない。  一言で言ってしまえば、俺のせいだ。桜は俺に振り回されたせいで、巻き込まれただけに過ぎない。  今回の事は、事の発端もその結果も、全ての原因は俺にあるのだから。  こんな考え方自体が、既に驕りだろうか。もしかしたら自分でそう思っているだけで、桜に言わせれば自意識過剰なのかもしれない。  しかし、この役目は他の誰にも、たとえ神にだって任せてしまっては、きっといけない。
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