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「ところで」
ん?
雪の方から話しかけてきた。珍しいこともあるもんだ。
「なんだ?」
思ったことは当然表には出さず、なるべく気楽に返すことにする。
「なぜ静のことばかりきくの」
瞬間────。
かつてないほどの悪寒が体中を駆け巡った。
自分の死を直感し、予感したときでさえ、ここまでではなかったはずだ。
発生源はもちろん、雪だろう。
彼女は体からその名に恥じぬ冷気(幻覚)を放っている。
俺は自慢でも自惚れでもなく、雪が何を考えているのか、その瞳、僅かな表情の変化、行動の端々から、読み取れるようになってきたように思える。
雪の方も、出会った当初よりも随分と心を開いてくれたように感じていた。
だが────。
「いいいいいい一体どうしたのですかお姫様!? な、何故にそんなにお怒りで!?」
今は何故だか分からなかった。
雪はしばらくジッと俺を見つめる──いや睨みつけていたかと思うと、盛大にため息を吐いて立ち止まった。
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