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自宅に着いたが、いつもの「おかえり」の声がない。どうやら姉さんはまだ帰ってきていないようだ。
鞄を居間のテーブルに乱雑に置くと、奥のソファーにどかりと座った。途端に疲れが全身を襲う。
五日前────丸々眠っていた俺の感覚としては昨日────の怪我も完治はしていない為だろう。
眠い……病み上がりで体力が戻っていないのか?
時刻は今夕方の六時。寄り道をしていなければもうすぐ如月美智子──姉さんが帰ってくる。
せめてそれまで起きていよう。おかえりぐらい言ってやらないと、すねるからな…………。
……………………。
…………。
……。
目を覚ますと、ソファーに横になっていた。
……目を覚ます? 眠っていたのか。
こうこうと照る電灯に目をシパシパさせると、何やら人の気配がするのを感じた。
姉さん、帰ってきたのか。
覚醒しきれないまま、一瞬チラと横目を向ける。
…………今、真横に人がいたような。白い髪に、何か赤いものを首に巻いていたような……。
もう一度、今度はしっかりと見遣る。
見間違うはずもない。先程別れたばかりの少女、雪だった。
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