第一章 其の二 三人(at Home)

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 いくらなんでも寝起きに要求するな。  ……いや、待てよ。もしかしてそういうやり取りを期待されていたのか!?  まずい、このままでは俺は『期待を裏切る男』────それじゃなんかカッコイイな。『期待を踏みにじる男』になってしまう!  そんな立ち位置に置かれたまま物語が進んだら、最後の最後で主人公が活躍して大団円さえも踏みにじってバッドエンド直行か!?  それではいけない!  雪に俺は期待に応える男だと知らしめねばならない!  汚名返上。名誉挽回。  雪が何を期待しているのか考えろ! 彼女の言葉、行動、仕草の端々から読み取るんだ!  もしこれが姉さんだったら、何か企んでいるだろうと直ぐに分かるのに。ドッキリの一つくらいなら日常的にやられるからな……。  ん? 待てよ、ドッキリ?  雪は所在無く立っていたかと思うと、こちらをちらりと見遣る。目が合った。  ……かと思ったら、途端に目を逸らした。……怪しい。  もちろん穿った見方なのは充分に分かっている。雪は発言こそ少々奇抜だが、冗談はほとんど言わない。  今日は特に、なにやら普段の三割り増しで無口だし、理由は分からないがご機嫌斜めだ。
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