第一章 其の二 三人(at Home)

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 そんなコイツがドッキリなんてするのか?  いやしかし、それでも、常に物事には何%かの可能性はある。現に、雪の行動はなにかと不自然だ。  姉さんがこんな時間になっても帰ってきていないというのもおかしい。  例えば、実は姉さんがもう帰ってきていて、またよからぬ知恵、つまりはドッキリ企画を雪に教え、雪は素直にもそれを実行しようとしているとか。  ……今思いついただけの筋書きだが、意外と辻褄が合うな。  姉さんはどこかに潜んでいて、ドッキリ大成功のプラカードと共に俺を大笑いできる瞬間を今か今かと待っているのでは!?  ……あり得る。  ──今になって思えば、俺は心のどこかでドッキリであって欲しいと、そう思っていたのかもしれない。  そうでなければ、この思考の繋がり具合が自分でも共感できないのだ。  そんなに『期待を裏切らない男』でいたかったのだろうか。  俺があれこれとつまらない推考に耽っていると、雪がこちらをじーっと見ていた。その瞳にはなにやら意を決したかのような、強い光が宿っている。  まさか、ドッキリ企画の発動か!?
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