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……それにしてもこの部屋、随分暑いな。
いくら夏が近いとはいえ、この時間にもなれば服一枚だと肌寒いくらいなのに。
俺は上着を脱ぐ。
チラと雪に目を向けると、何か言いたげな目でこちらをじっと見ている。
どうしたんだ? 急に脱いだからか?
「……それ」
「ん? ……ああ、これか」
雪が指差したのは、俺の首元から見えている包帯だ。
――五日前の騒動の名残。
半分以上が自分で勝手につけた傷だと、そう思っているのだが、彼女はどうにも気になるようだ。仕方ないのかもしれないが。
雪は自分から話題を振った割に口を開かない。
覗き込んでみると、どうも浮かない顔をしている。どうやら、無表情なりに落ち込んでいるようだ。
「気にすんな。俺が勝手につけたヤツだ」
しかし、表情は晴れない。
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