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この場を取り繕う、というわけではないが、俺は努めて明るく振る舞う。
「大したことないさ。なんなら見せてやろうか?」
いや、流石に言いすぎか。上半身をくまなく怪我したのだから、それは俺の上半身裸を見せてやろうか? と言っているのと同じことなのだから。
が、俺の目の前の少女もまた、『期待を裏切らない女』だったようだ。
「…………見る」
間を置いて、言った。
「……………………は?」
雪は立ち上がると、つかつか歩いてきて、俺の目の前で立ち止った。
「脱いで」
「い、いやいやいやいや! ホントに大したことないんだって! 大丈夫だから……」
「脱ぎなさい」
「は、はい」
姫の貫禄を、初めて感じた。
ごそごそと、おどおどとワイシャツを脱ぐと、雪は改めてまじまじと見つめてくる。
俺はミイラ男よろしく、上半身くまなく包帯でぐるぐると巻かれて、所在なくつっ立っていた。
さりげなく身体に力を入れて、筋肉を隆起させようなどと、見栄も張ってみる。
……いや、誰でもやるだろ?
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