第一章 其の二 三人(at Home)

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「傷口が見えない」 「見えてたら包帯の意味ねえだろ。……ちなみに聞くが、なんで見たいんだ?」  実のところ、俺も自分自身の怪我の具合をまともに見てはいないので、気にはなっているのだが。 「……医術の心得がある」 「……本当か?」 「擦り傷から切り傷までお手の物」 「狭いな!」 「うるさい。……横になりなさい」   「うるさい!? 横になったら包帯外せないだろ! 傷口が見たいんだよね!?」 「なら、今外す」  雪は俺の意見は最初から無視で、さっそく包帯を解いていく。 「どうせ洗うから外さないといけない」 「……確かにな」  雪の小さな体、すなわち他人よりも短めな腕でいそいそと、くるくると解いていく。  その手際は存外てきぱきとしていて、やや驚く。  しかし、よくよく見れば、不必要に力んでいるためか、頬が若干赤い。指先も妙に震えている。 「医術の心得なんて、方便かと思ってたけどな」 「……よく、静の手当てをしていたから」  あながち、嘘でもないらしい。
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