第一章 其の二 三人(at Home)

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「じゃあ……」  それだけ言って雪は、俺の右肩に手を置く。優しく、傷口の縁をなぞるように。 「くすぐったいな……」 「我慢」 「……はいはい」  雪は二箇所、三箇所と俺の傷を触り、体を撫でる。それは力なく置かれた手よりもさらに弱く、まるで本当にくすぐられているかのようだ。  まさしく『触れる』という表現になるのではないだろうか。  そして雪の顔は、その手の甲にくっ付きそうなほど近い。まじまじと、見つめられている。  ただ、その表情は真剣で集中した顔、というより、どちらかというと好奇心や驚き、そしてどこか悲しみを帯びていたように思える。  ちなみに雪は俺が寝そべった右側にいる。左側は壁。  まるで這うかのように顔を近づけているため、左側、雪にとって奥には、身を乗り出す姿勢になるのもいたしかたない。  というか、実際は最初に右肩に触れたときから既に膝をベッドに立てた状態だったのだ。ならば、特徴といえばそのサイズ(小)と言っても過言ではないだろう雪が、俺の左半身まで届くはずがないのだ。
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