第一章 其の二 三人(at Home)

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 白い髪が垂れて、俺の顔に触れる。  なんだろう。女の子特有の、いい匂いがする。  雪の呼吸が聞こえる。息が俺にまで届いている。でも、なんか息遣い荒いような。  彼女のいろんなことが、いつもよりはっきりと分かる。  雪はただ俺をジッと見つめている。  ……なんで俺を見てるんだ? 雪は俺の怪我を見たいんじゃなかったか?  よく見れば顔が赤い。 「……拓海」  なんでそんなに甘い声を出すのですか!? 「……は、はい」  雪は真正面から俺を見る。その目は何かを求めているかのようにうるんでいる。 「…………拓海」  今の雪は、なんか……可愛い。 「……なんだ」  雪のまつ毛って、意外と長いんだな。  雪は小さく口を開く。 「………………拓海」  でも、髪が降りてるから、よく見えない。 「…………ああ」  俺は同じように雪の髪をかきあげる。白くて、まるで触れていないかの様に、柔らかかった。 「……………………拓海」  そしてその手で、雪の顔を引き寄せる。 「…………ここに、いるよ」  雪は目を閉じると、もう片方の手を俺の肩に乗せる。  そして、俺と雪、二人の唇が触れ────。
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