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「拓海ぃ。ごめんねー。今日会社の同僚と飲みに出てさあ。あ、遅くなったけど、今から夕飯準備するか…………」
その瞬間、世界は確実に、時を止めた。五秒ほど。
ベッドに寝転がる上半身裸の俺に、その上に乗った雪、そしてあと一秒あれば、二人は接触していただろうこの状況。
現れたのは俺、如月拓海の姉、姉さんこと如月美智子である。
俺はもちろん、何も発することは出来ない。何かを考える余裕なんて、あるはずがない。
対して雪は、あれ? なんだろう。俺の肩に置かれた手が震えている。
それもさっきみたいに、緊張で上手く動かせないというようなものではどうやら違う。
ガクガク、ブルブルと体を震わせているのだ。
そして、姉さんは
「包丁は台所よね……」
と言って部屋を出た。
「ちょっと待て!! 待って! 待ってください!」
俺はガバッと起き上がると、雪をどかして姉さんの後を追う。
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