第一章 其の二 三人(at Home)

16/30

387人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
「拓海ぃ。ごめんねー。今日会社の同僚と飲みに出てさあ。あ、遅くなったけど、今から夕飯準備するか…………」  その瞬間、世界は確実に、時を止めた。五秒ほど。  ベッドに寝転がる上半身裸の俺に、その上に乗った雪、そしてあと一秒あれば、二人は接触していただろうこの状況。  現れたのは俺、如月拓海の姉、姉さんこと如月美智子である。  俺はもちろん、何も発することは出来ない。何かを考える余裕なんて、あるはずがない。  対して雪は、あれ? なんだろう。俺の肩に置かれた手が震えている。  それもさっきみたいに、緊張で上手く動かせないというようなものではどうやら違う。  ガクガク、ブルブルと体を震わせているのだ。  そして、姉さんは 「包丁は台所よね……」  と言って部屋を出た。 「ちょっと待て!! 待って! 待ってください!」  俺はガバッと起き上がると、雪をどかして姉さんの後を追う。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加