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姉さんの状況把握能力は疑いようがない。今の一瞬でも全て飲み込んだのだろう。
正直、言い訳なんてできはしないのだが。
……待てよ。俺は姉さんを追いかけていいのか? むしろ積極的に逃げるべきじゃないか?
そう思ってピタリと足を止めてみたが、遅かった。俺は既にキッチンに到着していた。
視線の先には、エプロン姿の姉さんが俺に後ろを向けて立っていた。その右手には宣言通り包丁が。
俺に気付いたのか、姉さんはゆっくりとこちらに振り向いた。
「あら、どうしたの? いくらなんでも、こんな早くに夕飯は出来ないわよ」
姉さんは努めて静かに声を出しているように思える。優しく湛えられた笑顔が今の俺には恐ろしいものにしか見えない。
エプロンまで着けている。
あれは、返り血を浴びないようにするためか!?
「ね、姉さん……?」
「雪ちゃんは放っといていいの? お楽しみだったんでしょう? 今度は邪魔しないから、続きをやってくれば?」
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