第一章 其の二 三人(at Home)

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 どうやら姉さんは俺が寝ているうちにすでに帰ってきていて、雪にあれこれと吹き込んだようだ。  どっきりではなかったものの、洒落になっていない。 「雪ちゃん呼んできて」  姉さんは未だに落ち込んでいるようだ。何やらぶつぶつと言いながら配膳の準備をしている。 「入っていくタイミングがよくなかったのかしら……。もっと決定的な……」  ……どうやら今回の手口の反省らしい。  からかいネタを本気で熟考するのはやめて欲しい。  というか、さっきの今で雪にどう話し掛けたものか。これでなんか後腐れ残ったらやだなあ。  俺は自分の部屋の前で、扉一つ開くことに躊躇う。  雪は自分からは口を開かないだろうから、俺が言わないといけないのか。  ……どうしよう。  いやいや、どうしようとかないだろ! 夕飯に呼ぶだけなんだから。用件をそのまま言えばいい。  ……でも、聞きたいこともあったんだが、切り出しにくくなってきた。  立ち往生。  俺は小心者なのだろうか。 「なーにやってるのよ。さっさとしなさい」  一喝される。情けない。  ちらっと振り返ってみると、既に三人分の食事がテーブルに揃っていた。
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