第一章 其の二 三人(at Home)

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 大きく息を吐くと扉に手をかける。 「……雪?」  部屋の中を覗き込むと、彼女はベッドに座っていた。  こちらに気付いたのか、彼女は立ち上がってつかつかと歩いてきた。  俺は半身になって道を開ける。  なんと声をかけようか。とか思っていたのに、雪はこちらに目も合わさずそのまま俺の脇を通り抜けて部屋を出ていってしまった。  …………。  無視、された?  食事の席に着いても、雪は一向に口を開こうとせず、黙々と料理を口に運ぶばかり。  姉さんの方はまだ意気消沈しているようで、下ばかり見つめている。  俺はそんな二人に話しかけるような余裕などありはしなかった。  空気が悪い、というよりはどうにも張り詰めて、凝り固まってしまった感じとでもいうのだろうか。  ……なんにしろ、こんなに居心地の悪い食事は生まれて初めてだ。  結局、三人は各々食事を済ませて、席を立つ。
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