第一章 其の二 三人(at Home)

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 そんなわけで俺は真夜中の屋上に寝転んでいるのだった。  ……それにしても、なんだってあんなに気まずいのだろう。そんなに意識する必要はあるのか?  時間をおいて冷静になれたからだろうか、俺はぼんやりそんなことを考えていた。  実際なにかあったわけでもないし。  そもそもアレは姉さんが余計な事を吹き込んだせいだ。悪いのは姉さんなのであって、それを気に病む必要はないはずだ。多分。  雪の態度がおかしく見えたのだって、ただの勘違いかもしれない。アイツは基本無口だしな。  若干自信はないが、考えていくうちにだんだん気が楽になってきた。  気持ちが軽くなってきて、さっきまでは寝返りすら億劫だった体を起こすと、それに合わせるかのように強い風邪が吹いて、体を芯から震えさせる。 「寒っ」  思わず口に出してしまうくらいには寒かった。 「なら部屋に戻れば」  前触れもなく、すぐ後ろから声が聞こえた。抑揚や、感情の起伏をほとんど感じさせない声だ。  振り向くと、やはりというか、立っていたのは小さな女子と書いて小女、降谷雪だった。
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