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「…………なあ」
俺の方から話しかけてみる。
「……なに」
一拍置いて返事が返ってきた。
「お前、なんか夢ってあるか?」
「……モラトリアム?」
「ちげーよ。なんて言うか、あるだろ? 一度でいいからやってみたいことぐらい」
俺は座り込んだまま話す。
「…………あなたは?」
答えないのかよ。
「俺は、一度でいいから…………あそこに行ってみたい」
あの青い星を指差した。
「地球に……」
雪は俺の言葉に驚きも呆れもしなかった。ただ反応した、という感じだ。
「……どうして?」
「そりゃ……ここは狭いだろ? 空も街も」
一日でこの時だけに見られる、本当の空から目を逸らさずに言った。
「人はせっかく宇宙に上がったのに、地球にいたときよりも狭苦しい、窮屈な生き方をしてる。地球との連絡もほとんど取らず、隣の《シティ》に行くこともない」
行けなくはない。ただ、そんな人がほとんどいない。
つまりは排他的なのだ。
月の人々が新たな環境に適応するために、お互い結束しなくてはいけなかった。それは分かる。
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