第一章 其の二 三人(at Home)

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 だが、もう五十年だ。  いい加減国もシステムも安定しているし、むしろ発展や繁栄のために、もっと外と積極的に交流しなくてはいけないはずだ。  なのに、未だによそ者をよく思わない風潮は消えない。  月はそこにある《シティ》(数は忘れたが)全てで一つの国家という括りになっている。だが、《シティ》同士の行き来が容易でないため、簡単に交流も出来ない。  極めつけは、貴族という存在である。  貴族が偉い理由は、彼らが才能に恵まれ、その《シティ》に貢献してきたから、ではない。  単純に、彼らが貴族階級の家に生まれたからである。  才能ある平民よりも、無能な貴族が長宝される社会。功績を上げた者には爵位、貴族の地位が与えられることもあるが。(もちろん、極めてまれではあるが)  つまりは『血』だ。  お互いが協力し合う必要があった五十年前は、この『血』は大切な繋がりだった。  『血』は内輪の繋がりは強める。だが、内に関心が向く分、それに反比例して外に対する意識は薄れる。  だから俺が何を言いたいのかというと、この月に新しく作られた社会は、進み方を間違えている。
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