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「――俺は、そういう狭苦しい、退屈なのは嫌なんだ」
長々と、だらだらと話してしまった。
だが、ここまで言って、俺はようやく気がついた。
今俺が間違っていると言った貴族が、直ぐ後ろにいたことを。いや、長々話した相手こそが、その間違っている貴族だということを。
言い過ぎた。
俺はガバ!! と後ろを振り向いた。
「いや、今のは、そういうつもりで言ったんじゃなくて……」
完全に失言だ。怒らせるか、悲しませるか。どちらにしろ、ろくな事になりそうにない。
「べつに、いい」
しかし、雪は存外普通に返してきた。
雪は最初見たところから一歩も動かず、ただ俺に真っ直ぐ視線を向けていた。
「私も思っていることだから」
その言葉は罪悪感の棘となって、俺にぐさりと刺さった。
貴族は生まれながらにして権力を持っている。その貴族が今の社会の状態を作ったと言っていいだろう。
だが、それは雪じゃない。
少なくとも目の前にいる少女が行った事ではないのだ。
しかし、貴族は生まれながらにして貴族だ。
彼女は領主の娘として生まれ、たったそれだけの理由で、過去や、今の社会について責任があるのだ。
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