第一章 其の二 三人(at Home)

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 それに比べて俺の言葉はなんだ。ただ抱えている不満を社会のせいにしているだけだ。 「それは違う。今の社会は確かに私達が作ったものだから。責任があるのは当然」  そんな自虐的な独白を、彼女は否定してくれた。  相も変わらず無表情だが、その声には力が込もっているように聞こえた。  ただ、『私達』と言われたその言葉が、暗に俺とは違うと言われているような気がして、少しだけ辛かった。 「……悪かった。考えなしなことを言った」 「気にしなくていい。言われ慣れているから」  ……俺はコイツのことを理解した気になっていたが、実のところ全然分かっていなかったようだ。 「ただ、あなたが外の世界を知りたいということは、決して悪いことじゃない」 「……ありがとう」  現状に対しての不満を誰か、何かのせいにするのは、かなり格好悪い。  今の俺の惨めな気持ちが、そう言っている。
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