行間 友人(The Violencer)

2/3
前へ
/218ページ
次へ
 時刻は午前零時をまわる。  とある少年が顔を出した青い星を見上げている。  少年の名前は杉原恭平(すぎはら きょうへい)という。  彼がいるのは路地裏だ。  左右のビルは彼を押し潰さんばかりに近い。人の身長分ほどしか幅のない道に立っている。  杉原はこの時間でも未だに制服のままだ。彼の格好を『制服』と呼べるならの話だが。  少年はブレザーの内側、本来はワイシャツがあるべき所に派手なアロハシャツを着ていた。  胸元から金のネックレスを覗かせ、それに合わせるかのように金に染めた長髪を後ろ手に束ねている。  だが、今の彼を見た人は、そのいかにも不良のような恰好よりも先に、もっと別の点を注目するだろう。  少年の顔が真っ赤に染まっていたのだ。それだけでなく、ブレザーやスラックスにまで鮮血を浴びていた。  更には彼の握った拳からポタポタと血を滴らせている。  人目に触れれば、間違いなく騒ぎになる状況である。  だが、一人ではなかった。  彼の周りには同じ制服姿の男が三人いた。もちろんアロハシャツなどは着ていないが。  彼等と杉原は顔見知りでもなんでもない。しかしそれでも、男達は全く騒ぐことはなかった。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!

387人が本棚に入れています
本棚に追加