387人が本棚に入れています
本棚に追加
時刻は午前零時をまわる。
とある少年が顔を出した青い星を見上げている。
少年の名前は杉原恭平(すぎはら きょうへい)という。
彼がいるのは路地裏だ。
左右のビルは彼を押し潰さんばかりに近い。人の身長分ほどしか幅のない道に立っている。
杉原はこの時間でも未だに制服のままだ。彼の格好を『制服』と呼べるならの話だが。
少年はブレザーの内側、本来はワイシャツがあるべき所に派手なアロハシャツを着ていた。
胸元から金のネックレスを覗かせ、それに合わせるかのように金に染めた長髪を後ろ手に束ねている。
だが、今の彼を見た人は、そのいかにも不良のような恰好よりも先に、もっと別の点を注目するだろう。
少年の顔が真っ赤に染まっていたのだ。それだけでなく、ブレザーやスラックスにまで鮮血を浴びていた。
更には彼の握った拳からポタポタと血を滴らせている。
人目に触れれば、間違いなく騒ぎになる状況である。
だが、一人ではなかった。
彼の周りには同じ制服姿の男が三人いた。もちろんアロハシャツなどは着ていないが。
彼等と杉原は顔見知りでもなんでもない。しかしそれでも、男達は全く騒ぐことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!