行間 友人(The Violencer)

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 彼等が三人とも例外なく地に伏していたからだ。  杉原に付いている血を少しでも調べれば、それが彼等の血であるとすぐに判るだろう。  杉原は三人には目もくれず、ビルに狭められた空を見上げていたが、不意に視線を落として自分の身体を見回す。 「あーあー。きったねえな。落ちんのか? この汚れ」  まるでたった今気が付いたかのように言う。  彼は見て分かるように不良と呼ばれる類の人間だ。校内ではとある少年と極めて仲が良い。  クラス内の他の生徒も『恰好こそ奇抜だが、中身は面白くて気のいい人物』という印象を持っている。  だが、それはあくまで校内の話だ。学校の敷地から一歩外に出れば、彼はやはり『不良』でしかない。  酒や煙草こそやらない(もっとも、《シティ》では彼は成人なので問題はない)が、法や規則よりも自分自身の感情を優先させる。 「……ぁあ゛ーー、まだムシャクシャする」  彼は誰が聞いても分かるほどに機嫌の悪い声を出すと、一番近くに倒れている男の腹を無造作に蹴る。  男は反射的にうめき声をあげるが、杉原は見向きもしない。  そして億劫そうに頭をガシガシ掻くと、そのまま歩いて路地裏から去った。
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