第二章 始まり(Like a Love Comedy)

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 朝。  昨夜、雪は当然だが姉さんと一緒に寝たらしい。  しかし、朝一番の彼女は目の下に大きな隈を作っていた。  姉さんの寝相は最悪だからな、おそらく満足に眠れなかったんだろう。 「お――おはよう」  声を掛けてみる。  雪はボーっとしている。返事がない。目は焦点を捉えておらず、髪も心なしかくしゃくしゃと乱れている。  着ているパジャマも第一ボタンが外れて肩までずり落ちて、いかにも華奢そうな鎖骨が覗いている。  一言で言えば、いつもの無表情キャラが台無しである。  寝ぼけているのか? 「……雪?」 「……………………ぅん」  雪は俺に気付いていないのか、体をふらふら~と揺らして目を擦ったりしている。 「…………しずかぁ」  妙に間延びする声で呟く。  正直に言おう。可愛い。  それにしても、朝身内以外の人がいると、どうしてこんなに新鮮な気分になるのだろうか。  そんなどうでもいい事を考えている俺に気付いたのだろうか、雪がとことこと歩いてきた。
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